「技術だけでは語れない狩猟の現場。猪の止めさしで感じたこと」
この日は朝からくくりわなに猪が掛かったとの連絡が入り、止めさしの応援に向かった。そこから猪の内臓摘出、さらに解体場ではクマの解体作業まで経験することになり、まさに“朝から晩まで狩猟漬け”の一日だった。技術の足りなさや新しい学びが詰まった貴重な体験になった。
猪の止めさしへ向かう
現場に到着すると、80kgほどの大きな猪がくくりわなに掛かった状態でこちらをじっと見ていた。緊張感が一気に高まる。
同行していた狩猟仲間が スラッグ弾 で狙い——
「どんっ」
という銃声とともに猪が倒れた。
ただ、着弾は頸部付近で完全には仕留め切れておらず、痙攣が続いていた。
「心臓が動いているうちに血抜き頼むぞ」と言われ、ナイフを手にする。
初めての猪の血抜き
頸動脈の位置が分からず、先輩に教わりながら切ろうとするが、猪の皮膚は想像以上に硬い。
何度かためらってしまい、刃が入らない。
「思いっきりが大事やぞ!」
と言われ、強く刺すとようやく刃が通った。
しかし思ったほど血は噴き出さず、どうやらこの時点で心臓が止まっていたようだ。
🐗
命をいただく以上、「できるだけ苦しませず仕留める」という気持ちは常に持っている。
銃を撃つだけではそれは叶わない。
狙った場所へ確実に弾を送り込む技術、気絶・止めさし・血抜きの技術。
そのすべてが必要だと痛感した。
だからこそ、法改正ギリギリで入手したハーフライフルを、きちんと使いこなせるよう練習していきたい。
川での内臓摘出作業
止めさし後は近くの川へ移動し、内臓摘出(いわゆる“腹抜き”)を行う。
今回は初挑戦だったが、前回のクマ解体の記憶を頼りに進める。
最初の難関はオス特有の部分。
生殖器の処理に迷っていると、先輩が代わって手際よく取り外してくれた。
次に腹部を裂き、胸骨を鋸で切る。
猪の胸骨は太く、左右の肋骨に沿って大きく開く必要がある。
その後、食道を切断し、足側へ引き剥がすように内臓を下ろしていく。
横隔膜・筋膜がところどころ引っかかり、慎重に削ぎながら進めた。
最後に肛門付近を丸くカットし、尻尾ごと外して内臓を引き抜く。
川での洗浄と“ちょっとしたコツ”
内臓の血合いや汚れは川水で丁寧に洗い流す。
ここで大事なのが、
「猪の下流で洗わないこと」
自分の長靴の泥で猪の肉を汚してしまうからだ。
さらに先輩の工夫が光った。
猪の胴を利用して川の流れをせき止め、水をため、その水で腹の中を洗う。
こうした細かい技術が非常に勉強になる。
洗浄後、猪は解体場のプールに1日つけて血抜き。
その後つり下げて数日熟成させるらしい。
猪の寝屋を見学
解体場へ向かう道中、先輩にいくつかの林道を案内してもらった。
途中、猪が木の根の下を掘って作った寝屋があり、空洞になっている。
「こんなふうに作るんだ…」
実際に見ると、思っていた以上にしっかり作られていて驚いた。
近くの柿の木の枝が折れている場所もあり、
「これはクマや」と説明を受ける。
子どもの腕ほどの太さの枝でも簡単に折るらしい。
そのパワーに恐怖すら覚える。
解体場での“クマの解体”
解体場に着くと、前日に獲れたクマの解体をすることに。
これで 人生2回目のクマ解体 だ。
皮むきは少し慣れてきたようで、先輩に褒められた。
だが直後に調子に乗ってしまい、余計な肉を削いでしまう。
まだまだ丁寧さが足りない。
肋骨から背ロースやバラを剥がす作業も難しく、
背骨の突起に沿って刃を通す感覚がうまくつかめない。
身を余計に削ってしまったり、切るラインを間違えたりと課題は多い。
もっと動物の身体構造を理解する必要があると強く感じた。
クマ肉のキムチ鍋で締める夜
分けてもらったクマ肉は前回より量が多く、ありがたい限り。
帰宅後、さっそくキムチ鍋へ投入。
相変わらず脂はあっさり、だけど旨味はしっかり。
美味すぎてつい食べすぎ、気持ち悪くなるまで食べてしまった…。
そして問題は冷凍庫。
すでにパンパンで、先日購入したサブ冷凍庫がそろそろ本格稼働しそうだ。
まとめ
猪の止めさし、内臓摘出、クマ解体まで経験し、
「技術を磨くことの大切さ」をあらためて痛感した一日だった。
次はもっと丁寧に、もっと正確に。狩猟者として少しずつ成長していきたい。
使用した装備・道具まとめ
- 猟銃:スラッグ銃(同行者)
- ナイフ:血抜き・内臓摘出用
- 鋸(のこぎり):胸骨・股関節の切断
- 長靴・防寒装備
- ビニール手袋
- 猪搬出用ロープ・シート
- 解体道具一式
- クーラーボックス
注意書き
本記事の内容(獲物の状況・作業手順・狩猟結果など)は、天候・地形・体格・猟法・同行者の技術などによって大きく変わります。
狩猟は危険を伴うため、必ず講習・指導を受け、法律と安全に配慮して行ってください。

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