「熊の黒い点が動いた日──初めての“本気の山歩き”」
先輩とその猟仲間との3人で出猟した一日。ヤマドリや熊の出没ポイントを案内してもらいながら山を歩くうちに、熊の気配、罠の猪、そして回収の難しさを痛感することになりました。緊張と学びの連続だった、そんな狩猟の記録です。
## 出猟の準備と山に入るまで
早朝8時に集合。先輩の猟仲間が犬の散歩で遅れるということで、先に山に入ることになりました。
向かったのは、先輩が巻き狩りでよく使う林道。ヤマドリの出没ポイント、こないだ熊が獲れた場所など、細かく説明してくれて「こういう実地の情報が一番大事なんだな」と感じました。
途中、
「ヤマドリおったら撃っていいよ」
と言われ、内心ちょっとテンションが上がる。ずっと食べてみたかった鳥なので、密かに期待して車に乗っていましたが、行きの林道では出会えず。
## 藪を切り開いて進む山歩き
林道の奥に着いて、ここからは徒歩で探索。
すぐに藪が現れ、ナタで切り開きながら進むルートに突入。
そういえば昨シーズン、講師猟師の人に
「ナタは必須やぞ」
と言われたのを思い出しましたが、本当にその通り。雪のない季節ほど藪が生い茂り、ナタがないと前に進めません。
## 熊が食べる“ボーダラの木”を見分けられるようになる
道中、先輩から「熊がよく登って実を食べる木」として“ボーダラの木”を教えてもらいました。黒い小さなブドウの房のような実がなる木で、調べてみるとこれはミズキ(水木)のこと。
狩猟界隈では地域によって
・実がぶどう状(だら)
・枝がダラダラして折れやすい
などから「ボーダラ」と呼ぶことがあるそうです(諸説あり)。
森を眺めているとボーダラの木の上に“黒い点”が見えることがある。それが動けば熊——。そんな話を聞きながら深い森を進んでいきました。


## 80m先のボーダラの木に黒い影…!
藪を抜けて舗装路に出ると、先ほど説明されたボーダラの木に“黒い点”のようなものが。
じーっと見ると、カタツムリのように「にょーん」と動いた。
「これは熊や…!」
そう判断して少し距離を詰め、約80m地点から先輩がライフルで2発。熊は木から落ちました。
すぐに
「ここからはスラッグに替えろ」
と言われ、緊張感が走る。
半矢の熊が一番危険だと、改めて身が引き締まる思いでした。
しかし付近を探しても血糊なし。姿もなし。
「弾が当たらなくてもビックリして落ちることもある」
という話もあり、今回は回収に至らず。

## 罠の猪も逃走…予想外の展開
気持ちを切り替え、先輩が今朝くくり罠で捕まえた猪の止め刺しに向かうことに。
自分は見学なので手ぶらでいいと言われ、そのまま近づいていくと、藪から「ガサガサッ!」。カメラを構えながら進むと、突然「ブチッ」という音がして、推定100kgオーバーの猪が逃げていく…
猟仲間がすかさず発砲しましたが、これも回収できず。
二つ続けて逃げられ、先輩は落ち込んでいましたが、最後には
「これも教訓や」
と前を向いていました。
## 再び熊の気配。遠射の難しさを知る
午後からは別の山へ“散歩がてら”という流れに。
とはいえ、またも藪の中へ。
「熊出たら二人で撃つから、ヤマドリ出たら頼むわ」
そう言われ、今回はバラ玉を装填。
引き返し始めたところで、反対の峰に“黒い点”がまたも出現。
猟仲間が膝撃ちで発砲すると、熊が木から落ちていくのが見えました。

しかし地図で確認すると約200m。
そこからの捜索は相当な時間が必要。
自分は早く帰る予定があったこともあり、ここで離脱させてもらいました。
夜のグループチャットを見ると——
「今日は見つからず。明日も朝から捜索します」
とのこと。
前回回収した熊も、発見が翌日だったそうで、
熊は撃つだけでなく“回収までが本当に大変”
だということを身をもって知りました。
## まとめ:熊猟は“発見→射撃→回収”までが長い
今回はヤマドリとの出会いはなく、熊も猪も回収には至りませんでしたが、先輩猟師の判断や山の読み、そして「回収の大変さ」を強烈に学んだ一日でした。
熊猟は本当に一筋縄ではいかない——。
そう実感した貴重な体験でした。
■使用装備まとめ
- ライフル銃(先輩・猟仲間)
- 散弾銃(自分)
- スラッグ弾・バラ玉
- ナタ(藪こぎ用)
- 無線機
- 防寒・防水ウェア
- 山歩きブーツ
■注意書き
この記事で紹介した獲物の気配・発見・回収状況は、その日の天候・地形・獣の行動パターンに大きく左右されます。
同じ場所でも毎回同じ結果になるとは限りません。安全第一での狩猟を強く推奨します。

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