朝の冷え込みと、巻き狩りへの期待
朝は少し冷え込んでいたけれど、山に入るにはちょうどいい天気だった。
今日は県主催のビギナーハンターズセミナー。
今年度3回目となる今回は、実地での「巻き狩り体験」がテーマだ。
体力的にきつい一日になるのは分かっていた。
それでも、山でしか得られない学びがある。
そんな予感を抱きながら、集合場所へ向かった。
ビギナーハンターズセミナーと巻き狩り
ここでいうビギナーハンターとは、
県が主催するビギナーハンターズセミナーに参加しているハンターのこと。
おおむね狩猟歴3年目以下が対象で、今回は20人ほどが集まっていた。
指導にあたる先生ハンターは全体で5人ほど。
そのうち2人の先生が、今回の巻き狩りでは勢子として一緒に山へ入る形だった。
全体説明が終わり、
先生から「勢子をやりたい人?」と声がかかる。
迷う間もなく、すぐに手を挙げた。
それを見た先生方は、
「なんで?笑笑」
「きついのに?」
と、少し不思議そうに笑っていた。
多分、
「なんでそんなに積極的なんだろう」
と思っていたんだと思う。
自分としては単純で、
数時間じっと待っている“待ち”よりも、
歩きながら山を感じられる“勢子”をやりたかっただけだ。
実地・巻き狩りスタート
すぐにフィールドへ移動し、巻き狩りが始まった。
北側から5人の勢子が入り、
約2km先の南側に配置された待ちに向かって、
獣を南へ追い込んでいく布陣。
勢子同士は、
目が届く、最低でも声が届く距離を意識しながら等間隔で進む。
途中には小さな山谷が2つほどあり、
登っては下り、また登って下る。
正直、かなりきつい。
比較的歩きやすい尾根沿いや一番下のラインは先生方が担当。
しかも進むスピードがとにかく速い。
「歩きやすいとこ歩いてて、めちゃ早いのずるい…」
そんなことを思いながら、
無線と声を頼りに必死で連携を取り続けた。
後半、新しい鹿の群れの足跡がはっきりと出てきた。
「あ、これ追い込めてるな」
そう感じられる状況に、一気にテンションが上がる。
このまま待ちに流せるかもしれない。
ただ、結果的に獲物を仕留めることはできなかった。
解体と懇親会
狩りの後は、猪の解体と懇親会。
ビギナーハンターとはいえ、
2年目・3年目の人たちはそれぞれ師匠と呼べる人のもとで経験を積んでいて、
すでに立派なハンターだった。
話を聞けば聞くほど、
自分も負けていられないと思わされる。
今回の巻き狩りフィールド解説
今回の狩場は、
東西に約300m、南北に約2kmの、かなり細長いエリアだった。
配置はシンプルで、
北側から勢子5人が南下し、
約2km先の南側に待ちが東西一列で配置される形。
地形の大きな特徴としては、
西側が尾根、東へ進むにつれて標高が下がっていく傾斜地になっている。
地図だけを見ると、
「北から南へ、ただまっすぐ進んでいるだけ」
そんな単純なフィールドに見える。
けれど、実際に歩いてみると印象はまったく違った。
南へ向かって進んでいる間、
右手側は常に上り斜面、左手側は下り斜面。
横方向に傾いた斜面をトラバースし続けながら南下していく形になる。
しかもこの2kmの間に、
大小2ヶ所ずつの尾根と谷を越える必要があり、
一度下っては登り返し、また斜面に乗る──その繰り返しだった。
特に後半に進むにつれて、
藪が一気に濃くなっていく。
足元は見えづらく、枝に体を引っかけられながら、
それでも斜面のバランスを崩さないように歩き続ける。
常に体を傾け、
踏ん張りながら進むため、
見た目以上に体力を削られる地形だった。
地図上では単純に見える狩場ほど、
実際に入ってみると、その「厳しさ」がよく分かる。
今回のフィールドは、まさにそんな場所だった。
なぜ獣は山側(尾根側)を抜けたのか【考察】
今回、鹿の群れは待ちが構えているラインの手前で、さらに山側(尾根側)を使って抜けていったようだった。
一つ考えられるのは、
尾根を進んでいた勢子が先行しすぎたことだ。
尾根沿いは比較的歩きやすく、どうしてもペースが上がりやすい。
その結果、勢子同士の横並びの一列が保てず、
尾根側の勢子と、その下の二列目の勢子との間に隙間が生まれた可能性がある。
鹿は、そのわずかな“抜け”を見逃さない。
結果として、待ちのラインにかかる前に、
尾根側の薄くなった部分から抜けていったのではないかと思う。
もう一つ重要なのが、地形そのものの逃げ場の構造だ。
今回のフィールドでは、
東側に道路があり、そのすぐ横を川が走っている。
鹿にとって東側は、音・人工物・水辺が重なる逃げにくい方向で、
実質的に「逃げ場がない」エリアだった。
そのため、
鹿の動線は自然と尾根側に寄りやすい状況だったと言える。
もし、
尾根側を先導にしつつ、勢子全体が囲むように、
南西から北東へ向かうような斜めのラインを意識して南下できていれば、
尾根側への抜けを防ぎ、
よりきれいに待ちへ流せていた可能性もあった。
とはいえ、
新しい足跡が確かに待ちの方向へ向かっていたことから、
勢子としての役割自体は果たせていたと感じている。
今回の反省点は、
勢子同士の横のラインをどう維持するか、
そして尾根側をどう「締め続けるか」。
次に同じような地形に入るときの、
大きな学びになったと思う。

おわりに
毎回、勢子をやると足が攣りそうになる。
無駄な体力もかなり使っていると思う。
それでも、
「また勢子をやりたい」と思ってしまう自分がいる。
きついけど、学びが多い。
山を歩き、獣の動きを感じ、人と連携する。
今回の巻き狩りは、
そんな当たり前だけど大切なことを、
改めて実感させてくれる一日だった。

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