――巻狩りができない日の、現場のやり方
狩猟をしていると、
「今日は人数少ないな……」
という日がどうしても出てくる。
巻狩りをやりたい気持ちはあるけど、
集まっても3人、よくて4人。
そんな日の朝、
先輩猟師がぽつりと一言。
「今日は……あんこまきだな」
そのとき正直、
あんこまき? 何それ?
という感じだった。
今回は、
僕が先輩猟師から教わった
少人数猟のやり方「あんこまき」について、
現場目線でまとめてみたい。
あんこまきとは?
結論から言うと、
正式な狩猟用語ではない。
講習会や教本にも出てこないし、
地域によっては通じないこともある。
でも、
石川で狩猟をしていると、たまに普通に出てくる言葉だ。
ざっくり言うと、
巻狩りをするほど人数はいないけど、 待ち(あんこ)を中心にして、軽く巻くやり方
これが「あんこまき」。
巻狩りとの違い
まず、普通の巻狩りはこうだ。
- 人数は5人以上(決まりはないと思うが多ければ多いほど良い)
- 待ちを複数配置
- 追いが大きく回って囲う
- 獣を袋状に追い込む
一方、あんこまきはまったく違う。
- 人数は3人〜4人
- 待ちが主役
- 追いは最小限
- 囲わない、あくまで「流す」
先輩はこう言っていた。
「今日は囲わん。
抜け道だけ押さえて、
あとは動かしてやるだけや」
あんこまきの基本的な考え方
あんこまきで一番大事なのは、
待ち(あんこ)の位置決め。
谷、尾根、獣道、
過去に何度も抜けられている場所。
「ここを通られたら終わり」
というポイントを、
最初からガチッと押さえる。
そこに一番経験のある人が入る。
残りの1~2人は、
- 谷を少し流す
- 尾根に人の気配を出す
- 追い込みというより「圧をかける」
そんな感じ。
実際に教わった配置の考え方
先輩に言われて印象に残っている言葉がある。
「あんこまきはな、
追いで獲ろうと思ったら失敗する」
つまり、
- 追いは獲る気で行かない
- あくまで獣を「動かす役」
- 獲るのは最初から待ち
人数が少ない分、
待ちの精度がすべて。
逆に言えば、
地形と獣の動きを読めていれば、
少人数でも十分成立する。
なぜ石川では使われやすいのか
これも先輩に言われて納得した。
- 平日は人数が集まらない
- 谷が深く、抜け道が限られる
- 雪で足跡が読みやすい
- 「今日は軽く行こう」が許される山が多い
だから自然と、
「今日はあんこまきでいこか」
という判断になる。
無理に巻狩りをやって事故を起こすより、
人数に合ったやり方を選ぶ。
これも立派な判断力だと思う。
あんこまきの注意点
楽そうに見えるけど、
正直、簡単ではない。
- 待ちの立ち位置ミス=全抜け
- 風向きを外すと即失敗
- 射線確認を疎かにしがち
特に思うのは、
一番上手い人が待ちに入らないと成立しない
ということ。
初心者が待ちに入ると、
獣は本当にあっさり抜けていく。
だから先輩はいつも、
「今日は俺があんこ入るわ」
と言っていた。
少人数猟でも、ちゃんと獲れる
あんこまきを教わってから、
「人数が少ない=無理」
と思わなくなった。
無理をしない。
人数に合わせる。
地形に合わせる。
これも狩猟の技術なんだと思う。
おわりに
あんこまきは、
教本に載らないし、
正式名称でもない。
でも、
現場で生きてきたやり方だ。
もし少人数で山に入る日があったら、
無理に巻かずに、
「今日はあんこまきだな」
そんな判断ができるようになりたい。
まだまだ勉強中だけど、
このやり方は、
確実に自分の引き出しの一つになっている。

コメント