狩猟鳥獣の中には、イノシシやニホンジカのように「狩猟といえばこの動物」という存在もいれば、実際の猟場ではなかなか出会わない動物もいます。
キツネもその一つではないでしょうか。
キツネは日本全国の山野に生息しており、狩猟鳥獣にも指定されています。しかし、イノシシやシカと比べると圧倒的に小さく、実際にキツネを狙って猟をする人がどれくらいいるのか、そして「キツネって食べて美味しいの?」という疑問もあります。
今回は、狩猟教本に記載されているキツネの生態をもとに、実際に雪山でキツネを見たときの経験も交えながら、狩猟鳥獣としてのキツネについて紹介します。

キツネとは
キツネはネコ目イヌ科に分類される哺乳類です。
日本では沖縄を除き全国的に分布しています。環境省の調査でも、キツネは沖縄県を除く広い範囲で生息情報が確認されています。
日本で見られるキツネは地域によって呼び方が異なり、北海道に生息するものはキタキツネ、本州・四国・九州などに生息するものはホンドギツネと呼ばれています。
身近な昔話にも登場するため、日本人にとって非常になじみ深い野生動物ですが、実際に野山で出会うと、その姿は想像していた以上に野生動物らしさがあります。
キツネの分布
狩猟教本によると、キツネは沖縄を除き、全国的に分布しています。
海岸から高山まで広く分布し、林地や草原など、さまざまな環境で生活しています。
特に疎林から背丈の高い草原などでよく見られるとされています。
環境省が2018~2021年度に行った全国的な分布調査でも、キツネは沖縄県を除く広い範囲で生息情報が確認されています。東北から中部にかけても、まばらながら広く分布していることが確認されています。
キツネの特徴
狩猟教本によると、キツネの頭胴長は約60~70cm、尾長は約40cmです。
雌雄同色で、オスはやや大きいとされています。
全身は淡い赤褐色で、のどから下腹部にかけての下面、四肢の内側、尾の先端はほぼ白色。耳と四肢の先端は黒色です。
また、北海道東部では、近年では灰黒色の「銀狐」タイプの個体も稀に見られるとされています。
細身の体に長い脚、大きな耳、そして長い尾。
イノシシやシカを見慣れた狩猟者からすると、実際のキツネはかなり小さく感じる動物です。
キツネはどんな場所で生活している?
キツネは森林だけに生息しているわけではありません。
海岸から高山まで広く分布し、林地や草原、農地周辺などさまざまな環境を利用しています。
春から夏にかけては土中に巣穴を掘り、家族群で生活します。繁殖にも土穴を利用します。
そのため、キツネを探す場合には「山の奥」だけを見るのではなく、林と草地、農地などが入り組んだ場所にも目を向ける必要があります。
キツネの足跡は特徴的
キツネの痕跡を探すときに面白いのが足跡です。
狩猟教本では、キツネは足跡が直線的であることが特徴とされています。
特に積雪がある場所では足跡がよく目立つため、雪山でキツネの存在を確認する手掛かりになります。
雪の上に一直線に続く足跡があれば、「これは何の足跡だろう」と追ってみるのも野生動物観察の面白いところです。
キツネは警戒心が強い?
キツネには、興味深い習性があります。
狩猟教本によると、敵に遭遇すると小走りに走ってから後ろを振り返り、追跡者の様子を確かめる習性があるとされています。
野生動物なので当然警戒心はありますが、実際の猟場では必ずしも人間を見ると一目散に逃げるとは限りません。
雪山でキツネに出会った
私自身、狩猟中にキツネを見たことがあります。
積雪のある山で巻き狩りをしていたときのことです。
私は待ちの役割を担当していて、勢子のいる方向をなんとなく眺めていました。
すると、視界の中で何かが動きました。
よく見ると、それはキツネでした。
距離は50mほど。
こちらを特に警戒している様子もなく、山の中を普通に動いていました。
イノシシやシカを相手にしていると、キツネがものすごく小さく見えます。
もちろんキツネも野生動物なのですが、50mほど離れた場所を何気なく歩いている姿を見ていると、なんともかわいらしく感じました。
「狩猟鳥獣としてのキツネ」という知識はありましたが、実際に猟場で見ると、イノシシやシカとはまったく違う存在感があります。
キツネは何を食べる?
キツネは主として肉食性ですが、植物質も食べます。
小型の哺乳類や鳥類などの動物を食べる一方、状況に応じて植物質も利用する、幅広い食性を持った動物です。
こうした食性の幅広さも、海岸から高山、森林から草原までさまざまな環境で生活できる理由の一つなのかもしれません。
また、農作物や畜産物などに加害する場合もあります。
キツネは一夫一妻
キツネは一夫一妻とされています。
春から夏にかけては土中に巣穴を掘り、家族群で生活します。
普段は単独で見かけることが多いキツネですが、繁殖期には家族単位で生活するという一面があります。
キツネは狩猟鳥獣
キツネは、れっきとした狩猟鳥獣です。
環境省が定める狩猟鳥獣の獣類20種類の中に、キツネが含まれています。
ほかにもタヌキ、ノイヌ、ノネコ、テン、アナグマ、アライグマ、イノシシ、ニホンジカなどが狩猟鳥獣に指定されています。
ただし、狩猟鳥獣に指定されているからといって、いつでもどこでも捕獲できるわけではありません。狩猟免許に加えて狩猟者登録が必要で、狩猟期間や区域、猟法などの規制を守る必要があります。
石川県では、令和8年度の一般的な狩猟期間は2026年11月15日から2027年2月15日までです。イノシシとニホンジカについては別途期間が延長されていますが、キツネはその対象ではありません。
キツネを狙って猟をする人はいるのか?
ここは狩猟をしていると一度は疑問に思うところではないでしょうか。
「キツネも狩猟鳥獣なら、キツネを狙って猟をする人もいるのだろうか?」
もちろん、キツネを狩猟対象として捕獲すること自体は可能です。ただ、現在の日本の狩猟で、イノシシやシカのように食肉目的でキツネが主要な狩猟対象になっているわけではありません。
キツネは大型獣と比べて体が小さく、食肉として得られる量も限られます。そのため、「肉を得るためにキツネを狙う」という狩猟は、少なくとも一般的なジビエ狩猟とはかなり性格が違います。
キツネって食べても美味しいの?
ここも、実際にキツネを見たときにふと考えたことです。
「そもそもキツネって食べて美味しいのだろうか?」
正直なところ、私はキツネを食べたことがありません。
キツネについて「美味しい」「まずい」と断定できるような話ではなく、一般的なジビエとしてイノシシやシカと同じように食べられている動物でもありません。
そもそもキツネは主として肉食性であり、野生動物としてさまざまなものを食べています。そのため、野生鳥獣の肉を食用にする場合は、種類を問わず衛生管理を十分に考える必要があります。
特に北海道のキタキツネについては、エキノコックス症との関係が知られています。厚生労働省によると、日本では北海道のキタキツネがエキノコックスの主な感染源で、感染したキツネの糞便などから人へ感染する可能性があります。
そのため、キツネを「食べてみよう」という発想よりも、野生動物として安全な距離を保ちながら観察するほうが現実的だと私は思います。
昔話では悪者にされがちなキツネ
キツネといえば、日本の昔話や伝承にもたびたび登場します。
人間を化かしたり、悪さをしたりする存在として描かれることも多く、「キツネ=ずる賢い動物」というイメージを持っている人も多いと思います。
しかし、実際の山で見るキツネは、昔話に出てくるような「人を化かす動物」ではありません。
餌を探し、子育てをし、危険を感じれば逃げる。
ほかの野生動物と同じように、その環境の中で生きている一頭の動物です。
私が雪山で見たキツネも、50mほど先でこちらを特に気にすることなく動いていました。
昔話のイメージとは違い、実際に山で見るキツネは、なんともかわいらしい野生動物でした。
狩猟をしているからこそ見えてくるキツネ
普段の生活では、キツネをじっくり見る機会はそれほど多くありません。
ところが、狩猟で山に入るようになると、イノシシやシカだけでなく、さまざまな野生動物の存在に気づくようになります。
雪の上に残った足跡を見たり、山の中を歩いている動物を見つけたり、動物がどこを通っているのかを考えたりすることも、狩猟の面白さの一つです。
キツネは狩猟鳥獣ではありますが、私にとっては「獲物」というより、猟場で偶然出会った野生動物としての印象のほうが強く残っています。
まとめ
キツネは、沖縄を除く全国に広く分布するネコ目イヌ科の野生動物です。
海岸から高山までさまざまな環境に生息し、主として肉食性ですが植物質も食べます。春から夏にかけては土中に巣穴を掘り、家族群で生活します。
足跡が直線的であることも特徴の一つで、特に積雪時にはキツネの存在を見つけやすくなります。
そしてキツネは、タヌキやアナグマ、イノシシ、ニホンジカなどと同じく、法律上の狩猟鳥獣です。
とはいえ、実際に雪山で50mほど先を歩くキツネを見た私としては、「これを狩猟対象として見る」というより、「こんなところにもキツネがいるんだ」と、しばらく眺めていたくなるような動物でした。
イノシシやシカを追う狩猟の中で、ふと現れるキツネ。
そんな偶然の出会いも、山に入るようになって感じる狩猟の面白さの一つなのかもしれません。

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